が、おかしい。来た道と風景が違う。
あれれ？と思いつつ走っていくと道端に冷蔵庫があった。
お、気がつかない間に冷蔵庫のとこまで戻ってきたか。
しかし何かおかしい、この違和感は・・？
その違和感の理由はすぐわかった。
来る時に見た冷蔵庫は道路の右側にあった。そして今見ている冷蔵庫も右側にある・・！？
どうやら他にも冷蔵庫が捨ててあったようだと理解して進んだ。
すると今度は牛舎が見えた。
さすがに「えっ？」と、バイクを止めて確認する。
どう見ても来た時にあった牛舎にしか思えない。
「どういうこと？」
「・・・・」
さらに先を進む。
次にあるのは右翼の街宣車のはず・・
やはりあった。街宣車が三台。しかしどこかおかしい。
街宣車は確かに三台あるが起いてある向きと順番が違う。それにエンジンがかかっているようだ。
かかわり合いになりたくないので速攻でスルーする。
そして軽トラック、やはりあった。が、ここでも違いが。
後ろの荷台のドアが開いている。
俺らはバイクを止めて軽トラックの荷台を覗いてみた。
中にはロープとナタ、それに大量の血のあと。
嗚咽を漏らしながら速攻で逃げ去る。
なんなんだここはいったい？
さらに進むと集落、ここも何かが微妙に違う。微妙によい臭いがする。
これは・・焼肉？
よく見れば集落の中に道が通っている。
俺らはその道を進んでみた。
すると来る時に通った広い道に出た。
ここからならすぐに国道ぽい道路に戻れる。

やれよかったと安心したが、今度は「もう一度さっきの道を最初から通ればどうなるんだろう」と好奇心がわきはじめた。
ツレの制止も聞かず一人で最初から進んでみた。
冷蔵庫・牛舎・街宣車・軽トラックと来て集落につく。
しかし集落は恐ろしく荒れ果てており集落の中の道も雑草で半ばふさがっている。
それでもそこを強引に通ると・・全然知らないところに出た。
なんだここは？ツレはどこだ？
舗装されている道路なので適当に走ると来る時来た三差路があって、そこを走ってるとツレがいた。
ツレは「なんで後ろから来るんだ」と怪訝そうな顔。
とにかくこの辺はわけわからんからと別ルートからダムへの降り口を探す。
するとスロープがあって、俺らはそこでフローで出撃した。
しばらく釣っていたんだが、なんか変だ。
いや変っていうか、俺の頭の方向感覚が完全におかしい。どうしても北と南を真逆に思い込んでしまう。なんだこれ？
しかもその現象はスロープ付近でのみでそこから離れると方向感覚は正常に戻る。
バスは釣れたがなんとも奇妙なダムだった。
さらに話は続いて暗くなったので俺らは帰ることにしたんだが、帰りにまた道がわからなくなり迷子になった。
とんでもなく長い時間彷徨ったあげく俺らは日吉ダムに到着した。
日吉ダムからは慎重に道を選んで走り、俺らは無事に家に戻った。
後日、あのダムはいったいどこだったんだろうと地図で調べたところ、どうやら京都の和知ダムらしいということがわかった。
そこでツーリングがてらに和知ダムに行ってみたが、たしかにダムは存在し牛舎や街宣車もあった。
だが順番が違う。位置も違う。
そういえばあの時は緑が濃かった。
しかし今は紅葉が始まっている。
「時間の中を迷子になった？」
と思いもしたがそんな非現実的なことあるわけがない。
未だに思い出しては納得のいく解答を考えている自分である。

終了